海流発電の実用化に挑む 黒潮流れる日本は適地
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当社代表取締役 熊野活行への海流発電に関するインタビュー記事が掲載されました。
海流で水車を回し、そのエネルギーで電気をつくるという、海流を利用した第三の再生エネルギーの実用化及び、今後の展開などの特集インタビュー記事になっています。
海流を利用した新発電システムが日本のエネルギー問題を解決する―。こう信じて疑わないのが日本システム企画(東京都渋谷区)の熊野活行社長だ。海流で水車を回し、その電力で発電機を駆動して電気をつくるというアイデアを成し遂げるため、2009年に海流発電装置の開発に着手。技術的課題などをクリアしたことから21年に開発部門を分社化した。熊野社長は「日本近海を流れる黒潮を生かせばカーボンニュートラルを実現できる。そのためにもパートナーを募りたい」と仲間づくりに奔走する。
――世界的課題といえる脱炭素社会の実現可能性は
化石燃料に頼っていては難しい。世界中で化石燃料を使用した発電所(2021年時点)は100万キロワット発電所を1基と換算すると、石炭火力が1178基分、石油火力が71基分、天然ガス火力が754基分。合計すると2003基分が稼働している。これに対し自然エネルギーである太陽光と風力による発電実績は338基分と6分の1に過ぎない。これらは立地場所が限られるので、現在の6倍規模まで増やすのは困難。つまりカーボンニュートラルは実現できない。
――実現するにはどうすればいいのか
海流の利用だ。現状の太陽光・風力発電は地球の30%しかない陸上に注がれる太陽エネルギーを利用しているにすぎず、海に降り注ぐ70%のエネルギーは未使用だ。この膨大な太陽エネルギーによって生み出される海流を生かさない手はない。しかも年間を通して安定的に流れる恒久的なエネルギーだ。つまりカーボンニュートラルを実現する唯一の方法は、太陽光・風力発電に次ぐ第3の自然エネルギーとして海流を利用した発電を実用化することだ。日本近海には世界最大級の海流である黒潮が流れている。日本にとって第3の自然エネルギーのキャパシティーは大きい。
――海流発電の実用化は進んでいるのか
これまで世界的に成功していない。というのは流体力学の定説を信じているからだ。専門家は液体も気体も同じ流体だから、風力の発電方式であるプロペラを使いなさいという。この話に従って流れが一番速いところにプロペラを置くわけだが、陸上なら地上20~30メートルに設置すればいいが、黒潮が流れる海底は深さ4000メートル級(浅いところでも3000メートル)。こんな海底に東京スカイツリーのような構造物を建ててプロペラを回せるわけがない。そもそも土木工事ができないし、海底は流れが遅いので、流速の3乗に比例する発電量は非常に少なくなる。海流の速いところ(海面下100~200メートル)でプロペラを回すには、海底に置いたアンカー(錨)からワイヤーロープでプロペラをつなぎ留めればいいが、海流が速いのでプロペラが凧のように揺れ、位置制御ができない。安定させようとするとコストがかかる。海流発電に挑む国・企業はあったが、どこも失敗続きで実現に至っていない。
――世界中の開発者の悩みをどう解決したのか
専門家のいう定説ではうまくいかないと考え、プロペラではなく水車を使うことにした。アンカーからワイヤーロープで水車を係留しながら、位置制御を安定化させるためブイ(浮標)を海上に浮かせてワイヤーと水車をつなげる。これにより水車はアンカーからのワイヤーとあわせて上下から引っ張られる仕組みになる。海の深さと関係なく流速が最大の海域に水車を設置できるし、位置制御の問題も解決できる。設置は海上のブイを基点に行うので、深さが100メートルでも4000メートルでも同じように出来るのが特徴で特許になっている。
――そもそも水車は海中で回るのか
川などに設置している水車の羽根は上のほうは空中で、下のほうだけが水に当たって回る。上も下も同じように水が当たれば回らない。そこで、特許になっているが上のほうは水が当たらない(風よけの)ように斜め板を張り付けた。さらに水が当たる下のほうは可変翼にして、下半分にあるときは開いて水流を受け、上半分にあるときは畳まれて水流を受けないで戻るようにした。これも特許になっているが、水の流れ方向に水車の向きを自動調整できるようにしており、発電効率は高い。板金加工の技術さえあればつくれるので、制作費も安い。つまり我々が独自アイデアで技術的課題を解決した海流発電システムは最大流速地点に安定的に設置できる技術といえる。
――すでに実験で成果を得ているのか
海流発電装置を海底から係留できるめどがついたので、09年から実証実験に取り掛かった。社内での水槽実験を経て09年12月から荒川上流での実験を開始し、導入水路・排水路、可変翼水車の基本事項を確認した。11年には用水路、12年からは大型水槽を使用した実験により流速の増加を確かめたり、発電効率を高めたりした。14年の実験では自然エネルギーとして最も高い37%という発電効率を達成した。これで黒潮海流での実験を行う段階に到達した。ただ、その後の新型コロナウイル感染症の流行で実験できずにいるのが残念だ。
――今後の展開は
海流発電の実用化を目指すため、21年に開発部門を分社化し「Kグリーンエナジー」を設立した。国土交通省など行政に説明に行くと「ぜひ実現してほしい」と期待してくれるが、自治体レベルになると漁業権の問題もあってなかなか難しい。とはいえ黒潮は世界2大海流の一つで、早いところは秒速2メートルにもなる。つまり日本は潜在的な海洋エネルギー資源大国であり、海流発電の適地といえる。黒潮を活用できれば化石燃料の輸入も減らせるし、カーボンニュートラルにも近づける。これまでは自社内で開発に取り組んできたが、これからは海流発電の実用化に向けて各企業・機関などとの連携が欠かせない。パートナーシップ形成のためのアプローチをかけていく。まずは、2025年2月11日~13日に、ドイツのエッセン市で開催される、エネルギー関連産業国際見本市(E-word energy&water2025)に出展し、地球規模でのカーボンニュートラルが可能である事を示すと同時に協力企業を募る予定。
――閉塞感が漂う日本経済の再生長にはベンチャースプリットが欠かせない。ぜひ海流発電を実用化してほしい
日本システム企画は給水管・排水管などの配管内赤さび防止装置「NMRパイプテクター」を主力製品として扱っているが、脱炭素につながり社会貢献になるから開発した。海流発電もそうだ、基本は「日本がよりよくなってほしい」に尽きる。自分は「変わり者」だからハングリー精神を忘れることなく、ぶれずにやっていける。